ウイングアークテクノロジーズ株式会社 営業本部
サービス&グローバルビジネス推進室 室長 岩本幸男

ビジネスの本質である「情報の交換」を担う帳票運用に、課題を抱えたままでは、SaaS利用者に真のメリットを提供することができません。ソフトウェアをサービスとして利用する方々へ「安心と安全」を提供するために、帳票パッケージ分野のリーダーである当社では様々な取り組みを既に開始しています。
【帳票のフォーム設計・開発のサービス提供開始】
図:帳票匠屋Webサイト
http://takumiya.wingarc.com/
帳票にはフォーム設計と開発が必要となりますが、帳票設計開発ツールを購入する必要があります。しかしながら、SaaS利用を検討する主な中小零細企業にとって設計開発のためのツール購入は本末転倒です。そこで当社では2006年11月に「帳票匠屋」を立ち上げ、その第一弾として帳票設計開発サービスを開始しました。このサービスによりお客様は、帳票フォームの変更依頼に対して安価に柔軟な対応が可能となり、帳票設計開発ツールの購入も不要となりました。
帳票設計開発サービス開始から半年ほどで、約30件の案件を頂戴し帳票開発に課題や不満を抱えたお客様が多く存在していたことを実感させられました。また開発量も既存帳票1フォームの修正から、新規システム導入に合わせて300帳票の設計開発と多岐に渡っています。数千帳票の開発案件も抱えておりサービスビジネスの必要性を強く感じさせられています。
また、2007年8月には、マイクロソフト社が提供する、会計管理、生産管理、人事管理など各種基幹業務を統合したERP製品「Dynamics AX」に対して、帳票運用ソリューション「Super Visual Formade」による帳票運用環境を提供することを発表しました。Dynamics AX販売パートナー、ユーザ企業からの新規帳票作成依頼や帳票修正依頼に対しても「帳票匠屋」が窓口となり支援を行います。
【帳票エンジンのSaaS提供開始】
上記の帳票フォーム開発サービスは帳票エンジンのSaaS提供のために先行して実施したものですが、業務サービスから、実行時に出力される帳票を生成するエンジン提供はSaaS環境に必要不可欠なものとなります。

例えば既に連携確認の取れているサービスとしてCRM SaaS世界No.1のSalesforce、統合アプリケーションSaaS世界No.1のNetSuiteをはじめ、グループウェア国内No.1のサイボウズOffice for ASP、SFA国内No.1のeセールスマネージャー、会計SaaS国内No.1のネットde会計、人事給与SaaS国内No.1のラクラスイオなどがあります。
それぞれ、各業務サービスのNo.1 SaaSベンダーですが、帳票SaaSと連携することで、他のアプリケーションや他社システムとの連携がシームレスになり、まさに帳票により業務を結ぶ「帳票中心アプローチ」の実践を行っています。帳票がなければ、それぞれの優れたサービスも孤島化してしまい、他のシステムとの連携に手間がかかり、SaaS導入の目的である業務の効率化・コスト削減・スピードアップにありつけないのです。
今後も様々な業務ソフトウェアがサービスとして提供されてきますが、「帳票匠屋」は、それら業務サービスを帳票サービスと連携することで、利用者にとってのサービス価値を高め、滞りの無い業務フロー連携を実現します。
帳票や集計分析などのBI機能、ログ管理、ID管理、検索などのインフラ系サービスの提供方法は、今後、大きく変わる可能性があります。現状システムでは、各業務は縦割りで個別最適化(孤島化、サイロ化)されており、各業務はそれぞれ、ログや帳票、分析や検索、あるいは認証などの機能を個別に用意しています。
製品ごとに帳票機能、集計分析機能そしてログ管理機能などが個別に、しかも重複して提供されていては、システム全体を管理することができず、まったく統制の利かないシステムになってしまいます。

しかしそれぞれの機能がSaaSとして提供されるのであれば、プラットフォーム側で共通インフラとして用意することが可能であり効率的です。共通インフラを利用することで、全体最適サービスを構成することが可能になります。各業務は共通マスタを軸にデータ連携可能なサービスとして提供され、入力業務はAPIを含む入力サービスと連携することで操作性が向上します。

帳票を例にすると、これまでの企業システム は個別の業務に紐付けされ、いわばそれぞれが縦割りの帳票運用だったといえます。しかも、システムごとの帳票機能は上位のアプリケーションに依存し、システムが刷新されると、帳票部分はスクラップ&ビルドを繰り返さなければなりません。全体最適の観点から見ると、業務ごとに帳票機能が重複しており、その分の開発や運用コストの削減、集中管理の障壁となっています。共通インフラ機能のSOA連携の考え方では、各業務システムから帳票機能を統合して利用できるプラットフォームを用意します。とくに、上位アプリケーションに帳票処理の制御を依存しない、独立した帳票生成を実現して、帳票運用の標準化・共通化・一元化をはかります。別々のサービスを利用していても、帳票の出入口を一本化できるため、内部統制にも有効です。

【俊敏さとコスト削減】
共通インフラ部分をコアサービスから切り離すことで、開発が早く、安く、そして単純化できます。共通機能にコストをかけて勝負する必要はありません。外部環境の変化により、入力・出力の方式やデバイスは大きく変化しますが、外部の共通インフラサービスを利用することで、コアサービスの保守が簡単になります。所有から利用へと変化するSaaSビジネスに不可欠な俊敏さを備えることができるわけです。
【価値創造】
パッケージベンダは帳票などの機能を自社で用意する必要がなく、共通インフラを呼び出すだけです。もちろん共通インフラを切り離すことによって、製品の開発コストも抑えることができます。一方ユーザ企業においては、業務ごとに別々のパッケージを導入したとしても、販売から生産、物流、会計に至るデータを一気通貫で分析できるという新しいメリットが得られます。会社全体の状況を正しく把握することができるようになるわけです。
しかしながら、共通インフラ化への課題もあります。例えば、既に各製品は、多少なりともインフラ機能を有しています。現状ではそれらの機能がコア機能と密結合されており、外部のインフラ部品を呼び出す構造になっていません。今後は、製品の作り方もSOAをベースにサービスコンポーネントの連携として実装されるようになり、その時こそ共通インフラの効果が最大限に発揮されることでしょう。
また、トランザクションデータを横串で分析するためには、共通マスタとの連携が重要となります。トランザクションデータおよびログデータなどに含まれる項目の名称・コードの意味の統一(共通リポジトリ)がなければ、せっかく収集したデータも集計ができないのです。
システム構築は、製造や建築と同様に「モノ作り」産業です。この「モノ作り」産業の長い歴史の中で、生産性を爆発的に向上させた要因は何か。誰もが標準手順によるオートメーション化と部品化という答えを1番目もしくは2番目に挙げることができるでしょう。高度成長を支えた自動車産業などでも、組み立てラインを持つ本社工場を中心に、周辺には標準部品を供給する関連会社がまとまって産業を構成しています。同じ「モノ作り」産業であるソフトウェア業界の問題点は、この標準部品を作成・供給するビジネスが存在していない、もしくは産業化されていないことです。
標準部品が供給されないため、システム構築は毎回部品の標準化策定から始めなければならないことが多く、何度も「同じような作業」を行わなければならないという点では、産業としてのレベルの低さを認識させられます。ここで問題なのは、「同じ作業」ではなく「同じような作業」という点です。似ているが少しずつ異なる部品が単一企業の中にもたくさん存在するということです。当然、部品としての管理はされていません。
